【図書館勤労生おすすめ本の紹介】『舞姫』
国語の教科書に掲載されている作品って、記憶に残るものが多い気がしませんか?「そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな」というセリフで知られる『少年の日の思い出』や、指を用いたコミュニケーションが印象的(あとプレーンオムレツがおいしそう)な『握手』など、思い返せばたくさんの名作と出会った時代でした。というわけで、今回は高校国語の教科書でおなじみ、森鷗外の『舞姫』をご紹介したいと思います。
森鷗外『舞姫』
この作品は作者やその周囲の人物の体験を基にして作られました。舞台となった明治時代は日本が大きな転換期を迎えた時期であり、まさに「激動」の時代でした。
そんな時代を生きた青年の自我の目覚めと苦悩が巧みに描かれているのがこの作品の魅力といえるでしょう。
私は昨年に受けた講義でこの作品について学んだのですが、そこで多くの受講生が初読の感想として
主人公・太田豊太郎の性格と行動に対する批判を挙げていたことを覚えています。
確かに豊太郎の一連の行動は批判に晒されてしかるべきものだと思います。
しかし、ただでさえ洋行の最中という非日常であったのに、そこに上手くいかない人間関係や出世からの没落、そこに手を差し伸べてくれた異国の美女や友のおかげで返り咲きの目が見えてきた…と、あまりに目まぐるしい状況の変化の中で、果たして彼の心は常のままであれたのでしょうか。
有名な「明治21年の冬」の段だけを見ても、彼の痛ましいまでの胸中が克明に描かれています。
その言葉の1つ1つに非常に共感させられ、私は彼に対する同情の念を禁じえませんでした…。
余談ではありますが、ヒロインのエリスにはモデルがいて、鷗外自身が将来を約束しあったエリーゼ・ヴィーゲルトという人物です。(※所説あり)彼女はエリスと異なり、日本までやってきています。
しかし、鷗外の家族による猛烈な反対に遭いその恋は報われることなく、鷗外は海軍中将である赤松則良の娘・登志子と結婚することになってしまいました。
『舞姫』にはその悲しみと罪悪感の吐露という側面も垣間見ることができるのです。
青年期に読んでおきたいこの一冊、お手元にとっていただければ幸いです。
本の詳細情報
『舞姫』
出版社:集英社
著者:森鴎外
出版年:1991年
配架場所:日野図書館 自動化書庫
請求記号:SHB||M
勤労奨学生 小河原(人文学部日本文化学科3年)
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