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企画展「小泉八雲」 『骨董』のお話

2020年12月24日   企画展「小泉八雲」

こんにちは、明星ギャラリー学芸員のHです。
今回も企画展「小泉八雲」をご紹介します。

9編の再話と11編の随筆からなる『骨董』は、1902年に出版されました。
今回はこの本に収録された「草ひばり」を紹介します。

 

「草ひばり」は、八雲が飼っていた草ひばりという虫を巡る随筆です。
晩年に書かれた随筆の傑作のひとつとも言われ、
八雲の死生観や人生観が感じ取れる作品です。

草ひばり(草雲雀)はコオロギの一種で、夏に見られる虫です。
雄は高く美しい声で鳴き、「ひばり」の名が付く通り、その鳴き声は鳥のひばりにも例えられます。
この草ひばりの声を、八雲は作中でこのように述べています。

 「ところが、このかあいらしい歌は、じつは恋の歌なのである。
 まだ見もやらず知りもせぬものを恋い慕う、そこはかとない恋の歌なのだ。」
 (小泉八雲『怪談・骨董他』平井呈一訳、恒文社、1993年第二版、pp.156-157)

八雲はこの草ひばりの雌を求める鳴き声を毎晩聞いてるうちに
気がとがめられている気がするようになり、
終いには良心の呵責に苛まれるようになってしまいました。
草ひばりに雌をあてがうと鳴かなくなるという言い伝えがありましたが、八雲は雌を買いに行きます。しかし、その時はもう10月になり、草ひばりはみんな死んでしまったはずだと
虫売りに笑われてしまいました。

その翌月、草ひばりは死んでしまいました。
女中が不注意で餌を与え忘れてしまったのです。
この時、草ひばりを日々見つめ、その草ひばりの声からその願望について考え続けたことにより
愛着の念が生まれてることに八雲は気づきます。

 「その、たかがちいぽけな生きものが、ふっと消えてなくなってしまったということが、
 まさかこんなにまでと思うほど、わたくしの心を痛めるのである。」
 (同書、p.160)

つい最近まで草ひばりの歌が響いていた書斎に一人佇み、
八雲はその小さな魂に自らの魂を重ね合わせたのでした。


「草ひばり」の挿絵。骨董の挿絵は朱色のインクで刷られました。


(部分)右上には草ひばりの姿が。

今年の冬は、賑やかなことをするのが難しくなってしまいました。
しかし、こうした時にこそゆったりと構えて、
八雲の静謐な作品に触れてみるのもいいかもしれません。


展示風景
左の展示ケース左の本が『骨董』

 

(明星ギャラリー・H)

 

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、企画展「小泉八雲」については、
休止しております。
再開する際には、図書館オリジナルサイトにてお知らせします。

※展示品はページ替えを行っております。
時期により、本ブログにて紹介しているページと
異なるページを展示している場合があります。

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