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企画展「小泉八雲」 『知られぬ日本の面影』の話

2020年9月29日   企画展「小泉八雲」

こんにちは、明星ギャラリー学芸員のHです。
企画展「小泉八雲」の展示資料をご紹介します。

『知られぬ日本の面影』(1894年)は、八雲が来日後最初に出版した本です。
9月29日の今日、出版されました。



表紙は竹と雪輪の文様が組み合わさっています。


内容は、来日後から松江時代に見聞きしたことが書かれています。
日本に訪れた際の、いわば第一印象です。

横浜にて人力車で寺や神社を巡ったこと、
西欧人で初めて出雲大社の昇殿を許されたこと、
松江での教師としての仕事と日本の教育や学校のこと、
教育勅語が下賜され学校で知事が奉読したこと、日本人の微笑について、
松江を去った時のことなどなど。

八雲が来日したころの日本は、富国強兵や殖産興業が推進され、
西洋化が急速に進んだ時期でもあります。
さらに、この本が出版された1894年は日清戦争が起こり、
日本は帝国主義国家として欧米諸国と肩を並べるようになります。
八雲は、当時失われつつあった「古き良き日本」を日本の真髄だと考え、
日本の風景や日本人の精神性を書きとめようとしました。

この本は英語で書かれ、欧米で出版されました。
当時、日本の文化を紹介した本はいくつかありましたが、
日本の本質にまで迫ったこの本には
当時の読者も大変驚いたことでしょう。
 


展示室内にある『知られぬ日本の面影』の行燈。

 「簡素な娯しみを楽しむ能力のあることを忘れたこと、
  人生の純粋な喜びに対する感性を失ったこと、
  昔ながらの自然との美しい神のような親しみを忘れたこと、
  それを反映している今は滅びた素晴らしい芸術をわすれたこと、
  -この忘却をいつかは哀惜する日がくるであろう。」
  (小泉八雲『日本瞥見記(下)』平井呈一訳、恒文社、
   1996年第二版、pp.431-432)

近代化が進む中で失われていったものを悔やむ時がくる、
というのは、決して当時だけの話ではなく、
現代においても当てはまりますね。

世の中が急激に変化しつつある今日こそ、
本作を通じて、八雲が捉えた「日本」に
触れてみるべきなのかもしれません。

(明星ギャラリー・H)


※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、企画展『小泉八雲』については、
休止しております。
再開する際には、図書館オリジナルサイトにてお知らせします。

※展示品はページ替えを行っております。
時期により、本ブログにて紹介しているページと
異なるページを展示している場合があります。

 

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