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企画展「小泉八雲」 『心』のお話

2020年12月3日   企画展「小泉八雲」

こんにちは、明星ギャラリー学芸員のHです。
企画展「小泉八雲」をご紹介します。

 

 

神戸時代の1896年に出版された『心』は八雲の代表作の一つと言われています。

序文によると、日本人の内面、無名の人びとの
「精神・勇気・決意・感情・愛情」
(小泉八雲『東の国から・心』平井呈一訳、恒文社、1986年第二版、p.355)を
描こうと試みた作品だと書かれています。

冒頭に収録されている「停車場にて」は、
現在の上熊本駅で当時実際に起こった事件をもとに書かれ、
日本人の機微を描いた情緒的な作品と評されています。
この作品は、殺人事件の犯人がその子供に泣きながら詫び、
その様子を見ていた人びとや犯人を連行する警察官までもが涙を浮かべる、
その様子を語り手である「私」が目撃した、という話です。
八雲は実際にこうした場面に遭遇したわけではありませんが、
「私」という外国人の異国での出来事として描くことにより、
日本のことを知らない海外の読者をも惹きつける作品となったのです。

 

『心』標題には五高教授佐久間信恭の
知人の子供の顔が掲載されています。
八雲はこの男の子の顔を「純粋の日本人の顔」だと
考えていました。

 

また、日本文化論として、
友人である雨森信成をモデルにした「ある保守主義者」や、
日本人の神道や仏教に基づいた道徳心を論じた
「日本文化の真髄」などが収録されています。

 「一艦だも失うおとなく、一線にだも敗(やぶ)るることなく、
 日本は、中国の勢力を打ちくじいて、あらたに朝鮮をおこし、
 領土をひろげて、ここに東洋の全政局面を一変させた。
 政策の上から見て、これは瞠目すべきことと思われるが、
 さらに心理的に見ると、なおいっそう瞠目すべきことである。」
(小泉八雲「日本文化の真髄」、同書p.363)

この本が出版される前、1894年から95年にかけて、日清戦争が起こりました。日本は、「眠れる獅子」と称された清国を倒し、西洋列島を震撼させました。八雲は、こうした日本に驚きつつ、一方で脱亜入欧を果たそうとする日本を批判します。

 

 

さて、この年は公私ともに、八雲にとって大きな転機を迎えた年でした。

この本が出版される前月には八雲が帰化手続きを終えており、「小泉八雲」を名乗るようになります。その半年後には帝国大学(現在の東京大学)に講師として赴任、東京の新宿区に居を定めます。

 

慌ただしい世の中ではありますが、八雲の作品を通じて、日本人の「心」を見つめなおしてみるのも面白いかもしれません。

(明星ギャラリー・H)

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、企画展「小泉八雲」については、
休止しております。
再開する際には、図書館オリジナルサイトにてお知らせします。

※展示品はページ替えを行っております。
時期により、本ブログにて紹介しているページと
異なるページを展示している場合があります。

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