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小泉八雲展 ほどくぼ小僧のお話

2020年8月11日   企画展「小泉八雲」

こんにちは、明星ギャラリー学芸員のHです。
今回も小泉八雲展をご紹介します。

展覧会のタイトルにもなってる「ほどくぼ小僧」。
ほどくぼ(程久保)は、明星大学のある地域の名前ですね。
モノレールの駅名にもなっています。

さて、この「ほどくぼ小僧」、江戸時代に実在したとされる人物のあだ名でした。
なんでもその人物、実は前世の記憶があるという噂がありました。


1815年(文永12年)中野村(現在の八王子市東中野)の勝五郎は、
8歳になったある日、自分の前世を語ります。
自分は程久保村で生まれ、藤蔵という名だった、と。
さらに藤蔵は6歳の時に疱瘡(ほうそう)に罹って死んだ、
家族の名前、死後の世界のことなど…。
その後、祖母と程久保村に訪れた勝五郎は
家や村の様子など藤蔵でしか知りえないことを語ります。
いつしか、人びとは彼のことをほどくぼ小僧と呼ぶようになりました。

この話は江戸でも評判となり、文人大名の池田冠山や国学者の平田篤胤、
多門(おかど)伝八郎が聞き取り調査を行いました。
多門は途中で泣き出してしまう勝五郎に菓子で機嫌を取ったり外に連れ出したり、
平田は弟子の寅吉(幼少期に天狗攫いにあったとされる人物)を同行させ
彼の語るお話で警戒心を解こうとしたりとなかなか大変だったようです。

八雲はそれらの調査の記録をさらに転写した『珍説集記』※を参照し、
「勝五郎の転生」にまとめました。
※八雲が使用した『珍説集記』は、明治天皇の側近として活躍した佐佐木高行の蔵書でした。



この作品は『仏の畑の落穂』(1897(明治30)年出版)という
随筆集に収録され、アメリカ、イギリスで出版されました。



タイトルはブッダが生きて存在している場所を意味しています。
仏教思想への関心が強く表出した作品を集めた本です。

縁の地は今でも残されています。
勝五郎が祖母と歩いた程久保村への旧道の一部は
明星大学のお隣の中央大学八王子キャンパス内に残されています。
藤蔵の墓は日野市の高幡不動尊に、勝五郎の墓は八王子市の永林寺
にあります。

夏休みといってもなかなか遠出が難しい今日この頃、
身の回りの古い伝承や民俗を調べてみるのも面白いかもしれません。

(明星ギャラリー・H)

本記事執筆にあたり、下記資料を参照しました。
北村澄江「『勝五郎再生期』-日野市に伝わる不思議な話-」、『多摩のあゆみ』108号、
たましん歴史・美術館歴史資料室編、財団法人たましん地域文化財団、2002年)

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、企画展『小泉八雲』については、
休止しております。
再開する際には、図書館オリジナルサイトにてお知らせします。
※『仏の畑の落穂』はページ替えを行っております。
時期により、本ブログにて紹介しているページと
異なるページを展示している場合があります。

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